脳梗塞になって思ったこと (2. 症状と治療とリハビリ)

2023/2/22に救急車で病院に搬送され、左延髄外側ラクナ梗塞(ワレンベルグ症候群)と診断され、入院しました。

目次

ワレンベルグ症候群

ワレンベルグ症候群。ワタシは初めて聞いた名前なのですが、理学療法士の国家試験に必ず登場するほど、業界ではメジャーなものらしいですね。大変多くの症状をもたらすそうですが、ワタシの場合は次の5つでした。

  • 嚥下(えんげ)障害
  • 眩暈(めまい)
  • 梗塞(今回は左)側の小脳機能の失調(左側に傾くのはこれ)
  • 梗塞(今回は左)側の顔面の温痛感覚障害
  • 梗塞反対側(今回右)の手足の温痛感覚障害(今回は腰から下部のみ)

治療と称するのは主に脳梗塞の進行を停止させること、梗塞による二次的な障害の進行を抑制あるいは緩和することだと理解しています。

一方で、前述した症状の多くは、脳梗塞によって機能を失った(要は脳細胞が死んだ)ことによるものなので、治療で回復させるというものではなく、リハビリによって(別の個所の脳細胞を代替活用することによって)機能を回復させることになります。

症状と治療とリハビリ

脳梗塞にかかわる直接的な治療としては今回は点滴による薬物治療のみでした。救急搬送されて検査後すぐに点滴による薬物投与が開始され1週間程度継続していたと思います。

入院してから数日(何日間だったかは失念)アルガトロバンとエダラボンが使用されていた。

ネットで調べたところ、アルガトロバンは血栓ができるのを抑えるもので発症後48時間以内だと使用可、となっているところから、今回の梗塞の発見が早かったことが分かりました。救急車を呼んだ息子の判断は正しかったということになります(感謝しています)。

エダラボンは梗塞後の脳の保護に使用されるとので、梗塞による症状の悪化を防ぐためのものと理解しました。

点滴袋を見ながら過ごした日々。エダラボン (iphone 14 pro)
これはアルガトロバン (iphone 14 pro)

点滴中は移動するにも点滴棒と共に行動することになりますが、左に倒れこむ体幹失調によって自立単独での歩行がまともにできない状態だったので、今回は大変助かりました。

20代に盲腸で入院した際に点滴の経験があり、その時にはトイレに行くにも点滴棒を連れていくのがとても面倒で邪魔に感じた記憶があったんですけど、今回は感謝です。

嚥下(えんげ)障害

ワレンベルグ症候群の特徴的な症状の1つのようです。食事という生命維持機能の健全性ということなんだろうなと予想しますが、主治医の先生は嚥下(えんげ)の症状を重視していました。

入院時にはほぼ飲み込みできない状態でしたが、3日ぐらい経つと、時間をかければ飲み込みができるようになっており、嚥下(えんげ)造影検査を受けることになりました。

その結果、既にかなり回復しているが、一部停留する場合もあるので食事の形態を変えて慣らしてゆくことにしてみましょう、ということになりました。

嚥下造影検査の写真の一部。飲み込んだ後に食道内は空になるのが正常
飲み込んだ後に一部残っている

この検査までの病院の食事は、水やお茶の飲み物を含めて、どろっとしたジェルのようなもの(流動食)、ばかりでした。

液体も通常のサラサラの状態だとむせてしまうため、とろみがつけてあります(というかほぼゼリーの砕いたもの)。

検査後は、”刻み食”と呼ばれるものになり、原形はとどめていないですが、もとのおかずやごはんを細かく刻んだもの(多分ミキサーにかけたもの)になりました。今思えば、それもなー、という程度の変化ですが、一応刻み前の食べ物の味がしたのでちょっと感動しました。

この刻み食は3日ぐらい続き、その後ほぼ通常の食事になりました。嚥下(えんげ)に関しては完全ではないにせよ、入院後1週間程度である程度回復したことになります。

刻み食。説明書きには”超”刻み。後に刻みから通常食へレベルアップしていった。

嚥下機能の回復に関して、後日、言語聴覚療法士(ST)の方に聞いたのですが、血管が詰まることによって、脳細胞に切り傷が付いたのと同じような状態になるので、血管周辺の脳細胞が炎症(腫れ)を起こすらしく、炎症によって一時的に嚥下にかかわる神経系が圧迫されていた可能性があるのだとか。

炎症による二次的なものなので炎症が収まると元に戻る、そういうことなのかなと思いました。しかし、脳細胞が腫れるとか、あまり想像できないですよね。ある程度納得できる話ではありますが。

今回は幸い嚥下に関しては特殊なリハビリを必要とせず機能は徐々に回復し、2週間程度でほぼ自力で通常の食事が可能になりました。

多くの場合、嚥下機能回復までの期間あるいは機能回復しない場合に備える意味で胃ろうを設置することが多いそうですが、今回は幸運にも胃ろうの必要がなく比較的早く回復しました、この点は本当に良かったと主治医の先生から言われました。

複視と眩暈

入院した日の夕刻ぐらいから、物が二重に見える複視(ふくし)がひどくなり、両目を開けた状態で見えるもの全てが二重に見えることに苦痛を感じるようになっていました。

ベッドに寝転んでいても天井のライトや模様が二重に、しかも回転するような揺れ方で見えているので気持ち悪くなり、ろくに食事もしていないにも関わらず嘔吐してしまいました。1週間程度は、ベッドに横になっている時間は、ほぼ目を閉じて過ごしていました。

複視は日数の経過とともに若干緩和されていったように思われます。入院した当初の状態では視界のほぼ全域が二重に見えていましたが、徐々に緩和され特定の領域(今回の場合は左端)を除けば、目を開けているのが苦痛、というほどではなくなっていました。ただ現時点(2023年5月下旬)でも完全に複視は無くなってはいません。

眩暈は日数の経過とともに緩和されているという感じがありません。未だにグラグラというかゆらゆら回転する感じが続いており、そのせいか(どうか不明ですが)歩行などの動作も気を抜くとふらつきます。外出時など多方向に視線を動かす必要のある場面ではかなりつらいです。

退院後に、外来で急性期病院の診察を受けましたが、その際には眩暈やふらつきに関しては月単位で徐々に改善、というか慣れてゆくことになるので気長に付き合うようにしたほうが良いとのことでした。1、2か月では治らないよ、ということでしょうか。このあたりはやっぱり脳卒中って重病なんだなと思いました。

複視と眩暈は原因や症状は厳密には異なるものと思いますが、当事者のワタシとしてはいずれも視界の不自然さという観点では同じです。

複視は単純に目が疲れる感じ。眩暈は視界のみでなく頭の中身もぐらぐら揺れている感じで疲れるというよりは気持ち悪い感じがする、と違いがある、といえばあるんですけどね。

脳梗塞が発症してから、約一年弱経過しましたが、ふらつきに関しては完全には無くなっていません。症状としても軽減されたという印象はあまりなく、油断するとヨロっとなってしまうことはいまだにあります。

小脳機能の失調

梗塞した部位と同側、つまり延髄より下の左半身の体幹失調がありました。バランス感覚が無くなっており片足立ちなどができない状態になっていました。

発症した当初から左側に倒れこむような動作になったり、歩くと左足が良く躓いたりしていたのは、小脳機能の失調によるものです。

手足の動作そのものに関しては特段の異常が感じられず、これらは検査によっても個々の機能的な問題は出ていませんでした。

体幹失調は感覚障害とは異なり、リハビリによってある程度の回復が可能と医師から説明を受けました。リハビリに関しては追々詳細を記載することにしたいと思います。

回復期病院に転院してからリハビリ担当の理学療法士の方からの指摘は、視覚と体の感覚が一致していない、ということでした。

つまり目を閉じた状態でまっすぐ立ったつもりでも、目を開けると体が傾いている、という状態だということです。具体的には左側の腰が若干下がり気味になっているのに、その状態で体がまっすぐだと認識して動作しようとするため、うまく体をコントロールできない、のだとか。

リハビリを始めた当初は、鏡で垂直水平を視覚で補正すると確かに片足立ちでもバランスはとれるようになりますが、感覚的にはむしろ意図して体を(右に)傾けている感じでした。

このあたりを回復させてゆくのがリハビリでの主な実施内容となりました。急性期病院での入院中でもある程度のリハビリは行いましたが、期間的に機能確認で終わってしまって、回復に向けては回復期病院で、ということになりました。

結果的にはそれで効率よくリハビリができたのですが、細かい部分では、脳梗塞発症前後で違っている部分はあるものの、自宅での生活への復帰までに約2か月かかりました。病院では50代中盤でも「若い」ので回復が早いといわれましたが。

人生で初めてとなった数か月レベルの入院生活は集団生活が苦手なワタシとしてはとても長く感じましたが、リハビリが予想以上にハードだったこともあり意外にもそれなりに充実した日々で、PT*、OT*、ST*の方々には本当に感謝しています。

 PT=Physical Therapy:理学療法
 OT=Occupational Therapy:作業療法
 ST=Speech Therapy:言語聴覚療法

温痛感覚障害

顔面には梗塞部と同側(左)部分、特に口回りに若干違和感を感じてましたが、動きが制限されるわけではなく、髭剃などのカミソリの感覚が分かりにくくなっているとか、頬っぺたをつまんでもあまり痛さを感じない、といった具合でした。

入院後1週間程度経過したあたりから、首から上部の違和感は緩和傾向かな、と思えるようになりましたが、それに代わって右下半身(腰から下)のむず痒さ(しびれとまではいかないがほぼ痺れ)を感じるようになりました。

段々とひどく成ってゆくのかも、と心配しましたが、ほどほどの程度でピークとなったのか、その状態が続いており、現時点(2023年6月)でも続いています。ほどほどの程度とは言え、立派に”痺れ”という感覚になっています。

温感と痛みの不感も痺れの感覚と同じように、入院期間が経過するにつれて徐々に自覚するようになり、常時顕著に感じるようになりました。

熱さ冷たさなどの温感は、シャワーを足に当てたり、湯船に足を突っ込んだ時でも、ほぼ感じなくなっています。つねった時の痛みも感じにくくなっています。水が当たっているとかつねっているという感覚そのものは無くなってませんが。

温感と痛みは神経系列としては同じで、右下半身のしびれの部分と同等部分(左側梗塞なので右半身)に症状として出ています。
医師によると、これらは予想された症状で、梗塞した延髄左側に起因する同側の体幹失調とは異なり、いわゆる麻痺ということになるのでリハビリでは完全に回復するものではない、といった趣旨の説明を受けました。

要は、慣れろ、ということでしょうね。痺れに関してはひどいようだと薬で緩和させるといった対処療法もあるらしいですが、今回そこまでひどい感じではないので放置しています。

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