リハビリの開始
梗塞した部位と同側、つまり延髄より下の左半身の体幹失調は小脳機能の失調によるものです。
失調した機能はリハビリによって回復を目指すことになります。
入院して翌日からリハビリが始まりました。
とは言っても、まだ点滴もしているので、実態としては現状確認という感じだったでしょうか。各部の動作がどの程度可能なのか、痺れや痛みはないか、などの確認を一通り行い、徐々に動作のバリエーションを増やしてゆく、といった進め方でした。
その後、計画書リハビリの実施計画書なるものを見せられました。現状の状態を得点で数値化したもの、期間、目標、などが書かれていました。
その際、はじめて気づいたのですが、リハビリと一口で言っても、大きく分けると3種類(PT=Physical Therapy:理学療法、OT=Occupational Therapy:作業療法、ST=Speech Therapy:言語聴覚療法)あり、最低でも3人の方々のお世話になるんですね。無知でした。
体幹失調に関連したリハビリは、主にPTとOT、嚥下と高次脳機能障害に関してはSTで行いました。
ワレンベルグ症候群の場合、梗塞と同側の顔面に障害が出るため会話や嚥下に関する機能障害が出ることがあり、主にはそのリハビリをSTで実施するようです。高次脳機能障害に関しては確認を行うのが主体のようで、知能指数のテストのような変なテストばかりさせられました。
ほぼ終了した後に聞いた話では、認知症の確認にも使用されるテストのようです。
STに関しては急性期及び回復期ともに確認がメインだったため、比較的早々にプログラムとしては完了し、代わりにPTとOTを充実させる、という感じでリハビリとしては進められました。
四肢の機能確認
リハビリは常に機能確認を行いながら実施するものなので、わざわざ四肢の機能確認として書くこともなかったのですが、ここでは、リハビリ開始当初の確認について書いています。
腕、手、指
これらに関しては、梗塞した延髄左側と同側、対側共に機能的な障害は認められませんでした。
ペンを持つ、文字を書く、おはじきをつまむ、放す、ボールを受ける、投げる、などなど。
これらの動作を一通り実施しても、障害がある場合にみられる特徴的な動作(がどういうものかはわかりませんが)が見られなかったということなのでしょう。
とにかく、腕、手、指に関しては機能回復のリハビリは特に不要になりました。
脚(足首から上)、足(足首から下)
指が動かないとか足首やひざが曲げられないといった、各部位そのものの動きに関しては障害は出ていなさそうでした。
梗塞した延髄左側と同側部の脚及び足に関しては、失調によって動作が若干緩慢になっているせいなのか、筋力低下の傾向はみられるとのことでしたが、二次的なものかなと思います。
片足立ちができない、歩行時に(左側に)偏る、ふらつくなどは小脳機能の失調によりバランス感覚が無くなっていることにって生じていることから、バランス感覚をとり戻すのがリハビリでの目標となりました。
片足立ちに関しては、ほとんどしないしなぁ、とか思ってましたが、普通に暮らしてても片足動作が多い、というか動いているときは大半は片足、ということに今更ながら気づかされました。
歩くときは(良く考えなくても)片足ですよね。ズボン、靴下などの着替え、靴を履くなどなど。失って初めてわかるの典型例ですね。
まずは独立独歩で
なぜか左によろける、というか吸い込まれてゆくような感覚で、杖のような何か支えがなくては歩行できませんでした。
点滴棒があるうちは良いですが、点滴による投薬もいずれ終わるので、歩行器を用意していただけることになりました。
歩行器がある場合には、歩行している動作は第三者から見ると「どこが悪いの?」というぐらいにスムーズに見えていたそうです。
無くてもいいんじゃないですか? といって歩行器を外してしまうとたちまちヨロヨロとなる、その差がどうして生じるのかが自分でもわかりませんでした。
今思えば、歩行器がある状態では、体のバランスが本来あるべき状態に保つことができていたのでしょうね。
歩行器に寄りかかることによって体が強制的にたまたま正しい垂直状態になっていたということでしょうか。
歩行器という補助がある状態とはいえ、何かを本来の状態に戻せば独立歩行は可能になるということが分かったのは良かったと思っています。
経験値を増やしてゆくこと
急性期病院でのリハビリは機能確認しながら可動域を拡大してゆく、という感じの進め方で、手探り感が強かったですね。
ワタシからの状況伝達が抽象的であいまいだったこともあると思います。何をどうすれば元の動作ができるようになるのか、自分ではまるでわかりませんでしたから。
歩行時は左側に傾く状態だったので、左側の足、脚の動きによって体全体の動作がどのようになるかの確認がかなり念入りに行われました。確認するということにより、ある意味体としては経験値が増えることにもなりますのでリハビリの一環ですね。
実際に実施したのは、以下のようなものですが、何れも左側へ移動や歩行する場合に、踏ん張りがきかないような状態になり簡単に転んでしまいそうな状態になりました。
- 平行棒の間を棒を持たずに、持って歩行
- マットの上で両脚及び片脚で膝立ち、前方及び左右に膝立ちで歩行
- バランスクッションに座って脚を交互に上げる
- バランスボードに座って脚を交互に上げる
- バランスボードで左右の沈み込み度合の差の感覚を確認
この他、片側手すりのみで廊下歩行、階段昇降なども行っています。急性期での階段歩行では、上り時は比較的安定していましたが、下り時で左足から降りる場合、左足が軸になると体を支えることが難しくなり前方へ大きく姿勢を崩してしまっていました。
これらは左片足立ちができないという、バランス感覚の欠如によるものですが急性期でのリハビリでは、これを改善するには至りませんでした。
回復期病院への転院
急性期病院での投薬などの脳梗塞の治療に関しては、病状がある程度安定してきたことから、リハビリを継続する場合には回復期病院へ転院する必要が出てきました。
急性期病院を一旦退院してしまうと、再度リハビリを希望しても回復期病院へ入院することができなくなるシステムだそうで、症状的には転院してリハビリを継続した方が良いとの主治医のアドバイスもあり、それに従うことにしました。
手続きに関するものは自治体によっても異なるようですので詳細には記載しませんが、ワタシの居住している神戸市では以下の流れで転院の手続きが進みました。転院先が決まるまで10日ぐらいかかったと思います。
- 回復期病院の候補選び (提示されたリストをもとにワタシが候補を選びました
- 回復期病院の選定と調整 (急性期病院と回復期病院の担当の方(社会福祉士)が実施
- 回復期病院の決定(転院可能日時が通達され、そこから最終的に選びます)
- 回復期病院への転院
2023/3/15に回復期病院へ転院することになりました。
回復期病院に転院し、急性期での一通りの状況が再確認されました。転院した日はほぼ引継ぎで終わり、リハビリ自体は翌日からの開始となりました。
急性期でのリハビリは基本的に平日のみで、休日や週末はお休みでしたが、回復期病院ではリハビリはほぼお休みがありませんの結構ハードです。その分集中してリハビリに取り組みむことができましたが。
初日のリハビリ後に担当のPTの方から受けた指摘は、視覚と体の感覚が一致していない、ということでした。つまり目を閉じた状態でまっすぐ立ったつもりでも、目を開けると体が傾いている、という状態でした。
具体的には左側の腰が若干下がり気味になっているが、その状態で感覚的にはまっすぐだと認識しているためうまく体をコントロールできなくなっている、のだとか。鏡で垂直水平を視覚で補正すると確かに片足立ちでバランスはとれるようになります。
視覚と体の感覚を一致させるのがリハビリでの目標となりました。急性期病院での入院中でもある程度のリハビリは行いましたが、期間的な制約もあって機能確認で終わってしまいました。
回復期病院へ転院、後直後に具体的な改善すべき箇所、目標が見えたのは良かったです。
黙々とリハビリ
実際に実施したのは、以下のようなものですが、急性期病院で実施した内容と本質的に大きな違いはありません。どうすれば本来あるべき状態になるのかが見えていたのが一番の違いです。
急性期から追加された実施項目は以下の通りです。
- 缶蹴りの動作 (何のことか理解できない世代の方もおられると思いますが、片足を十数センチ高い位置にのせる動作です)
- バランスボール
- 片足跳び(階段程度の高さ)
- 縄跳び
- ケンケン
- 反復横跳び
- タンデム歩行 (綱渡りのような足の運び、といえば良いでしょうか。(継ぎ足歩行というそうです))
- トレッドミルでの10分走 (6~9km/h)
- 中庭での極短距離走
- 脚立の昇り降り
- 筋トレ(体幹トレーニングのプランク系が中心)
トレッドミル、脚立の昇り降り及び中庭での極短距離走などは転院後比較的後期に実施できるようになったものです。
トレッドミルに関しては、まさかリハビリですることになるとは予想していませんでした。入院時にもともと運動をちょっとしている、ということでランニングとかトレイルランニングとかやってました、とちょっと盛ってしまったのが仇となったようです。
転院した回復期病院が比較的新しい病院だったということもありますが、PTの方からは「この病院でこれ(トレッドミル)使うの初めてですよ」と言われました。
なんでもキャリアは余り盛らない方が身のためだなと思いました。結果的には良かったのですが。
こんな感じで黙々とリハビリ計画通りに何とかできることをやって、2023/4/14に退院し、これまでの人生で最も長かった入院生活がようやく終わりました。
残りの人生で今回より長い入院生活が訪れないことを願いながら生活することになりました。
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